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認知症を知る~早期発見のポイントと対応~

9月14日(土)京都パルスプラザ 3階稲盛ホール
写真:京都府立洛南病院 副院長 森 俊夫氏
講師:京都府立洛南病院 副院長 森 俊夫氏
もり・としお昭和58年鳥取大学医学部卒。京都大学医学部附属病院精神科を経て同62年から京都府立洛南病院勤務、平成25年から現職。全国初の若年性認知症外来と一体となった若年性認知症デイケアの開設などに尽力。
超高齢社会に入っていく中、認知症の問題はどうなっていくのか。最新データからみる認知症の現状と問題点、認知症を正しく知るためのポイントや京都の取り組みなど、さまざまな情報が紹介されました。

認知症に対する意識を変える

今、京都の認知症ケアが大きく動きだそうとしています。今日の講演のテーマは「認知症を知る」ですが、そのことを交えながらお話ししたい。私の話を聞いていただいて、認知症の対する皆さんの見方、感じ方が変わることを期待して、話を進めたいと思います。

写真:府民講座の様子

私たちは今、どういう時代を迎えようとしているのでしょうか。団塊の世代が65歳以上の高齢者になるのが2015年問題、75歳以上の後期高齢者になるのが2025年問題といわれますが、その結果、私たちは前人未到の超高齢社会に入っていきます。私たちの前に道はない。私たちが世界に先駆けて人類がかつて経験したことのない超高齢社会に向けて、どういう社会を作っていくのかを世界に向けて情報発信していく責任があると考えています。

高齢化が進展する中で、認知症の問題はどうなっていくでしょうか。年齢階層別認知症有病率では、これまで85歳から89歳までのお年寄りの有病率は27・3%でした。ところが、今年6月に大幅に上方修正された衝撃的なデータが公表されました。85歳から89歳までの年齢階層別認知症有病率は、この結果41・4%にまで引き上げられました。

最新のデータは、現時点の認知症の高齢者数を462万人と弾き出しています。従来は、2035年に445万人としていました。これは何を意味するかというと、これまで20年後に445万人の認知症の人たちを迎える想定だったのを20年前倒しする必要が出てきた。これが、私たちが直面している現実です。私たちは、認知症が当たり前の時代を生きることになります。

認知症は近い将来の私たちの姿

私たちはこれまで、認知症と非認知症という二分法で認知症の人たちを川の向こうに追いやってきましたが、認知症と非認知症は実は地続きです。認知症予備軍のMCIは明日の私たち、認知症は明後日の私たちの姿なのです。

写真:府民講座の様子

今年四月に国際アルツハイマー協会が「I can live well with dementia.(私は認知症を持って幸せに生きることができる)」という世界認知症宣言を発表しました。非常にポジティブで、明るい素敵なメッセージでしょう。これは、私たちの認知症の疾病観を根底から変えていくメッセージです。

認知症を知る基本は、二つしかありません。一つ目は、認知症は病名ではなく、状態を表す言葉に過ぎないということ。認知機能が低下して、日常生活や社会生活に支障が出るようになったということです。もう一つは、軽度から重度までステージごとに課題が異なり、届けるべきケアも異なるということです。

認知症を引き起こす代表的な四疾患について少し話します。一番多いのがアルツハイマー病で、これが認知症全体の60%を占めます。きれいさっぱり記憶が抜け落ちる症状が特徴です。二番目に多いのが血管性認知症で、感情のコントロールがうまくいかず、喜怒哀楽が激しくなりやすい。三番目はレビー小体病、これはありありとした幻視が大きな特徴です。四つ目は、前頭側頭型認知症と呼ばれ、まるで別人のようにみえる行動を取るようになります。

埋めねばならない二つの欠落

認知症は、性格変化や抑うつ状態、注意散漫、記憶障害などの第一期、置き忘れ、しまい忘れから日常生活のつまづき、物盗られ妄想などの第二期、見当識障害や失禁などの第三期へと症状が進みます。第一期の特徴は、認知症に見えないことです。第二期は非常に激しい周囲への攻撃など問題行動がオンパレードになり、第三期になると身体介護の比重が増えてきます。

写真:府民講座の様子

認知症に対して、私たちの社会が準備してきたものに、実は二つの大きな欠落があります。一つ目は第一期に対するケアがないということです。これが大きな限界をもたらしています。もう一つは第三期でケアの排除が起こることです。認知症が重度になっても、体が元気でケアの際に拒絶や暴力が出ると、デイケアやショートステイを断られるケースが現実に起きています。本人や家族にとっては、本当に一番ケアが必要な時にケアが届かなくなる。私たちの社会的責任として、早急にこの二つの欠落を埋めなければならないと思います。

京都で今、認知症の臨床ケアが大きく変わると申し上げました。認知症の始まりの時点から切れ目なく連続したケアを提供しよう、というのが今のスローガンです。早期に発見して、早期に対応し、切れ目なく連続したケアを届けることができれば、認知症であっても明るく、楽しく幸せに生きることができる、という考え方です。

京都から大きなメッセージ届けよう

写真:府民講座の様子

京都の医療とケアの新しい風景を今からお話しします。早期発見、早い段階からといいますが、様々な事情で医療とケアにたどり着けない人がたくさんいます。初期集中支援というのは、こうした入り口部分の機能不全を解決するために医療やケアが連携して自宅を訪問し、そこで評価して、ケアを整えていく試みです。京都に暮らすすべての人に、こういう風に認知症の医療とケアを届けていこうというのが、私たちの新しい取り組みです。

京都では、認知症対策の五カ年戦略として、「京都式オレンジプラン」が策定されます。

もうすぐ、最終報告が出てくる予定ですが、その中には、認知症の私を主語にした、こういう社会であってほしいという、十項目の『アイメッセージ』があります。認知症の人がメッセージを発して、それをかなえられる京都をつくろうというものです。認知症の人の視点を政策評価の柱にしようというものですが、おそらくそんなことができるのは京都だけだろうと思います。そして、京都でそれができれば、全国に大きな影響を与えていく。京都から大きなメッセージを発信することができると思います。

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